「らーめん いしとみ」のご紹介
旅の途中、ふと気がつけば、腹が減っていた。
なんだろう、この空腹感。ただの腹ペコじゃない。どこか“何か”を求めるような、そんな渇き。
――小田原。
ふと頭に浮かんだのは、“小田原系ラーメン”なる言葉だった。
「そうか、小田原にも地元のラーメンがあるのか」
知らない味への興味と、満たされたいという衝動が、静かに湧き上がる。
……これはもう、食べずに通り過ぎるなんて無理だろう。
気がつけば、車を走らせながらスマホで店を検索していた。
「らーめん いしとみ」――どうやら、地元で長年愛される名店らしい。親子二代で守り続ける“変わらぬ味”。
そういう店には、間違いなんてない。むしろ、そういう一杯が、今の自分には必要なんだ。

やがて、黄色い看板が視界に飛び込んでくる。
「あれだ」
心が躍る。けれど――駐車場、四台分。やっぱり満車か……。

と、思った瞬間、一台の車がスッと出ていった。
「おぉ、これは…ついてる!」
何かに導かれるように車を停め、店の暖簾へと足を運ぶ。

その佇まいだけで、もう美味いと確信できる空気が漂っている。
13時半を少し回っていたせいか、並ばずに席に座れたのも幸運だった。

もう、注文は決まっていた。
チャーシュー麺、大盛り――これ一択だ。
席に着き、水をひと口。
深呼吸をしながら、ただ静かに、その瞬間を待つ。

そして――着丼。
思わず、低く唸る。
「おお…」
目の前に現れたその一杯は、黒く澄んだスープに、平打ちのちぢれ麺がどっしりと沈んでいる。
チャーシュー、もやし、三つ葉、海苔、メンマ、ネギ。
余計な飾り気なんていらない、そんな凛とした美しさがある。
「いただきます」

レンゲですくったスープから立ち上る湯気と共に、醤油の香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
焦がし醤油を思わせる香りの深さ――ひと口、すする。
……うまい。
コクのあるキレッとした醤油、なのに角がない、どこか柔らかい優しさもある。
そして表面の薄い油膜が、まろやかさをそっと支えている。

麺をすすれば、ツルツル、モチモチ。
この平打ち麺、しっかりとスープを抱きかかえてくる。
「うん、これだよ、これ…」

チャーシューに箸を伸ばす。
持ち上げた瞬間、ずしりとした重み。脂控えめ、でも噛めば噛むほど、肉の旨味がじんわりと広がる。
もやしと三つ葉と一緒に麺をかき込むと、シャキシャキとした食感が心地いいアクセントになる。
この食感が、またスープの美味さを際立たせる。
――さて、ここでちょっとした冒険を。
卓上のコショウを、パラリ。
湯気の向こうで、キラキラと輝く粒。
ふわりと漂うスパイスの香りが、鼻をピリリと刺激する。
ひと口すすると、優しいスープに、コショウのパンチがビシッと一本芯を通す。
「これ、いいな…」
たった一振りで、まるで別物のように表情を変える一杯。
味変とは、小さな冒険――その意味を噛みしめる。

そして、ふと目を奪われるのは、分厚いチャーシュー。
箸で持ち上げると、その重みが指先にしっかり伝わる。
じわりと脂が光り、ぷるぷると震える肉。
「これは…たまらない」
そっとかぶりつけば、ほろりと崩れる柔らかさ。
肉の甘み、香ばしい醤油、脂のコク――三位一体で押し寄せる波のような旨さ。

メンマもまた、しっかりとした味付けで、噛むたびにじわっと染み出す旨味。
麺とスープが、まるで一つに溶け合って、口の中で調和していく。
熱さに額がうっすら汗ばんでくるけど、それすらもごちそうの一部だ。
「もっと味わいたい」
箸は止まらない。ただ無心に、ただ夢中に、すすり続ける。

――ああ、これが、俺の幸せなんだな。
気づけば、スープを飲み干す寸前で我に返る。
「いかん、いかん…」
名残惜しくも、レンゲを置く。

「ごちそうさまでした」
席を立ちながら、心に決める。
小田原系ラーメン――
また来よう。いや、必ず、また来る。
満たされたのは、腹だけじゃない。
そう思わせてくれる一杯だった。
今回訪問した「らーめん いしとみ」の詳細
らーめん いしとみさんに伺った際の動画になります!
写真だけでは伝えられない魅力がつまっていますのでぜひ御覧ください!
らーめん いしとみへのアクセス
〒256-0816 神奈川県小田原市酒匂1丁目23−31
営業時間 | 月・火・木・金・土・日 11:30 – 15:50 17:00 – 20:30 水 定休日 ■ 定休日 不定休 営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
駐車場 | 有 4台 |
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