今日は、どうしても蕎麦屋のカレーだった
理由はない。
ただ、今日はどうしても蕎麦屋のカレーが食べたくなった。
こういう衝動は説明しようとすると、途端に野暮になる。
胃袋の奥が「今日はそれだ」と言っている。
なら、行くしかない。
頭に浮かんだのは、大宮のあの店。
ここ数年で、近所の蕎麦屋は次々と暖簾を下ろした。
気づけば、ふらっと入れる蕎麦屋は、もうここだけだ。
「よし、行こう」
さいたま市大宮区、少し外れた日常の道
大宮駅から少し離れると、街の表情は静かになる。
大通りの喧騒が一枚皮を脱ぎ、生活の匂いが残る通り。
派手さはない。
だが、この感じがいい。
こういう場所に残っている店は、たいてい強い。
流行らなくても、消えない理由がある。
そば処山茂登という安心感
そば処山茂登
店の前に立つと、ほっと息が抜ける。
年季の入った看板。
派手な主張は一切ない。
「ここは蕎麦屋です」とだけ、静かに語っている。
この佇まい。
変わらないことが、どれほど難しいかを知っている店だ。
迷わず、カレーセット
席に着くと、迷いはなかった。
カレーセット(温かいたぬき蕎麦)。
蕎麦屋に来て、カレーを頼む。
だが、これは裏切りではない。
むしろ、蕎麦屋を信頼しているからこその選択だ。
注文を告げると、店内は変わらず静か。
急かされることもなく、時間だけがゆっくり進む。
……そう思っていると。
迷わず頼んだ、そのカレーセットが到着した。

トレーの上には、たぬき蕎麦、カレー、そして小さなサラダ。
「お待たせしました」の一言とともに、
目の前に、今日の正解がそっと置かれる。
「うん、これだ」
この瞬間のために、ここへ来た。
そう思わせる、過不足のない佇まい。
たぬき蕎麦|まずは、出汁の香りから
湯気と一緒に、出汁の香りが立ち上る。
揚げ玉がつゆを吸い、表情を変えていく。

箸を入れる前に、ひと呼吸。
これだけで、来てよかったと思える。
ひと口すする。
やさしい。
尖りはないが、芯がある。
「うん……これだ」
派手じゃない。
でも、毎日でも食べられる味。
こういう蕎麦屋が減っているのが、少しだけ寂しい。
カレー|蕎麦屋の本気は、ここに出る
続いてカレー。
色は控えめ、香りは穏やか。

だが、スプーンを入れた瞬間にわかる。
出汁が、いる。
蕎麦屋のカレーは、自己主張しすぎない。
辛さで殴らない。
じわじわと、腹の底に沁みてくる。
口に運ぶと、
「ああ……やっぱり蕎麦屋のカレーだ」と心の中で呟く。
セットの完成度|ミニサラダという名の気遣い
セットには、ミニサラダがついてくる。
この一皿があるだけで、食事の輪郭が整う。
豪華じゃない。
でも、ちゃんとしている。
こういう気遣いが、長く続く店を作る。
言葉は少なく、満たされる
店内は静かだ。
無駄な会話はない。
だが、居心地はいい。
店と客の距離が、ちょうどいい。
放っておいてくれる優しさ。
一人で食べるには、これ以上ない空間だ。
この店が、残っていてよかった
最後に、蕎麦のつゆを一口。
胃袋が、静かに落ち着く。
「近所の蕎麦屋が、ここだけになってしまった」
それでも、この店が残っている。
それだけで、今日は少し救われた気がする。
派手な名店じゃない。
でも、こういう店こそ、街の記憶だ。
また来よう。
きっと、何も変わらず迎えてくれる。
今回訪問した「そば処山茂登」の詳細
そば処山茂登へのアクセス
〒330-0804 埼玉県さいたま市大宮区堀の内町3丁目297−3
| 営業時間 | 月・火・木・金・土・日 11:00 – 15:30 L.O. 料理15:00 17:00 – 20:00 L.O. 料理19:40 水 定休日 営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
| 駐車場 | 有 8台 店頭にも1台停車可 |


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