郡山の空の下、腹が減る
福島県、郡山市。 東北の玄関口とも言えるこの街での仕事を終え、時計を見ると午前10時半を少し回ったところだった。 空は高く、澄み切っている。
心地よい風が通り抜けていくが、ふと、体の中心から湧き上がるような訴えを聞いた。
腹が、減った……。
考えてみれば、今朝は車内で軽いサンドイッチをつまんだだけだった。
今の俺の胃袋は何を求めている? 洋食か? いや、違う。
和食? それも悪くないが、もう少しガツンと、そしてズズッとすすれるものがいい。
スマートフォンを取り出し、頭に浮かんだ言葉をそのまま打ち込む。
「郡山市 ラーメン」 画面には無数の店舗が立ち並ぶが、ある一つの店名が妙に俺の心に引っかかった。
『地鶏ラーメン ありがとう』。
なんて謙虚で、真っ直ぐな名前なんだ。 地鶏。いい響きだ。
今日の俺の胃袋を預けるにふさわしい。 よし、店は決まった。足を向けよう。
行列の先にあるもの『地鶏ラーメン ありがとう』
ナビを頼りに車を走らせると、静かな通りにふとその店は現れた。 素朴だが、どこか凛とした佇まい。

しかし、俺は目を疑った。 「おいおい、まだ開店30分前だぞ……?」
店の前には、すでに人だかりができている。 慌てて車を停め、店先のウェイティングボードに名前を書きに行く。
数えてみると、なんと俺は12人目だった。 郡山のラーメン熱、恐るべし。みんなどれだけ地鶏を愛しているんだ。
車で待てる、ありがたいシステム
開店すると店員さんがすっと近づいてきて、小さな機械を手渡してくれた。

「順番が来ましたら鳴りますので、お車でお待ちくださいね」 なんと。これはありがたい。
行列のプレッシャーを感じながら立ちんぼで待つ必要がない。
車内でリラックスしながら、これから出会う一杯への期待を高めることができる。
店の名前通り、客への「ありがとう」の精神がシステムに表れているじゃないか。 俺はシートを少し倒し、目を閉じてその時を待った。
ブルルルルッ!
突然手の中で暴れ出したアラームに少しビクッとしながらも、俺の顔には自然と笑みがこぼれていた。 いざ、入店。
みそらーめんの誘惑と塩チャーシューの決意
カウンターに腰を下ろし、メニュー表と対峙する。



実はここに来るまでの車中、俺の頭の中は「みそらーめん」でいっぱいだった。
コクのある味噌を地鶏スープで割ったらどうなるのか、想像するだけで喉が鳴った。
しかし、メニュー表に燦然と輝く「塩」の文字。そして「限定・おめで鯛飯」のポップ。
地鶏の純粋な旨味を味わうなら、やはり塩ではないか?
そこに、縁起の良さそうな鯛飯。 みそらーめんへの未練を断ち切り、俺は店員に声をかけた。
「塩チャーシューメン大盛り。それと、おめで鯛飯をください」
決まった。これでいい。いや、これがいいんだ。
黄金色の海と、おめで鯛飯
厨房から漂ってくる、鶏のふくよかな香り。 俺の胃袋はすでに臨戦態勢だ。
割り箸を割り、手持ち無沙汰にその時を待つ。
「お待たせしました、塩チャーシューメン大盛りです」

ドン、と置かれたその丼は、まるで芸術品だった。
透き通るような黄金色のスープの表面に、キラキラと鶏油が輝いている。
その水面を覆い尽くすように、丁寧に並べられたチャーシューの群れ。
黄金のスープと対峙する
まずは、スープだ。レンゲを静かに沈める。

ズズッ……。 ……ほう。おおお。 口当たりは丸く、優しい。
しかし、その直後に地鶏の圧倒的な旨味が波のように押し寄せてくる。
塩のカドは全くなく、ただただ深い。五臓六腑にじんわりと染み渡る。
これは、レンゲを持つ手が止まらなくなるやつだ。
麺と具材の三重奏
いかんいかん、麺も伸びてしまう。

箸で麺を持ち上げると、ふわりと湯気が立ち上る。
ズズズッ! ズズッ! 美味い。細めのストレート麺が、この黄金スープをしっかりと持ち上げてくる。
小麦の香りと地鶏の香りが、口の中で見事なハーモニーを奏でている。

合間に挟むメンマの、コリコリとした小気味よい食感が、いいアクセントだ。
そして、丼を覆うチャーシュー。しっとりとしていて、肉の旨味がぎゅっと閉じ込められている。
スープの熱で少し脂が溶け出した頃合いが、またたまらない。
おめで鯛飯の登場、そして奇跡の合体
夢中で麺をすすっていると、真打ちが遅れてやってきた。

「おめで鯛飯です」
小ぶりな丼に、上品に盛られた鯛のほぐし身。ネギとゴマの香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
ここで、俺はたまらず二つの丼を並べてみた。

見事な景色だ。郡山のテーブルの上に、俺だけの完璧な定食が完成した。
まずは鯛飯をそのまま一口。 ……うん、美味い。
鯛の旨味がご飯にしっかりとしみ込んでいる。これだけでも十分すぎるほど完成された一品だ。
だが、俺の直感が告げている。 この鯛飯の本当のポテンシャルは、まだ引き出されていないと。
レンゲで塩スープをすくい、おもむろに鯛飯の上へとかける。 タプッ、タプッ。

黄金の地鶏スープと、鯛のダシが出会う瞬間。 サラサラと口に流し込む。
……!! なんだこれは。 地鶏と鯛。山の幸と海の幸が、丼の中で奇跡の融合を果たしている。
互いの旨味を打ち消すどころか、相乗効果でとんでもない深みを生み出しているじゃないか。
ラーメンのスープでのお茶漬けが、こんなにも上品で、こんなにも暴力的に美味いなんて。
もう、スプーンを持つ手が制御不能だ。 麺をすすり、チャーシューをかじり、合間に鯛飯茶漬けを流し込む。
俺は今、幸せの永久機関を手に入れたのかもしれない。
ごちそうさまでした、ありがとう
気がつけば、あれほど波打っていた黄金の海も、おめで鯛めしも、跡形もなく消え去っていた。

ふう……。 額に滲んだ汗を拭い、水を一口飲む。 満腹だ。胃袋だけでなく、心まで満たされている。
席を立ち、会計へ向かう。 「ごちそうさまでした。めちゃくちゃ美味かったです」 俺が素直な感想を伝えると、厨房の奥から大将と、おかみさんが満面の笑みで応えてくれた。 「ありがとうございます! またぜひいらしてくださいね!」
店を出ると、相変わらずの外待ちの列。
並ぶ理由が、今の俺には痛いほどよくわかる。 振り返って店の看板を見上げる。 『地鶏ラーメン ありがとう』。
いやいや、礼を言うのはこちらのほうだ。 素晴らしい一杯を、ありがとう。
郡山に来たときは、必ずまた寄ろう。次は、今日見送ったみそらーめんもいいかもしれない。
心地よい満腹感を腹に抱え、俺は再び車へと乗り込んだ。
今回訪問した「地鶏ラーメン ありがとう」の詳細
地鶏ラーメン ありがとうへのアクセス
〒963-8822 福島県郡山市昭和2丁目2−15
| 営業時間 | 火・水・木・金・土・日 10:30 – 14:30 17:00 – 18:30 月 定休日 営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
| オープン日 | 2017年1月15日 |
| 公式アカウント | https://www.facebook.com/jidoriramenarigatou https://www.instagram.com/jidoriramen_arigatou |
| 駐車場 | 有 |


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